ストレンジの恐怖


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「なぜ、恐ろしいと思うのだろう。ブレイン…

とてつも無い寂しさを恐ろしさと錯覚しているのだろうか?これも全部お前のせいか?」


「しるか。そもそも、俺にはお前の考えることなんてわからないんだから。ふにゃふにゃとして訳が分からん。わかるのは…そうだな。お前が震えていることくらいだ」


「それは、お前のせいだよ。どうしようもない」


「あくまで、教育の賜物さ。」


「ラック」


「この世界には全くそんなことすら感じないヒンチクリフだっている。

考えてごらん、それ自体は全く変わりのないもので、誰にだって平等に訪れるものだ。お前が恐れているのは、その恐れの中身は、大したことない面倒ごとの集合体さ。お前を揺さぶる大きな感情たちだ。もちろん、それはとても大事なものだよ、生きていく上で。そのまま持っておくといい。」


「その中身は何なんだ?俺は何を恐れているのだろうか。ヒンチクリフの祖父母、両親、兄弟、友人、きっと1人ずつ消えていく。そして、物だけが残る。言葉の塊だけが残る。彼らには二度と会えなくなっていく。」


「それを寂しさと感じる人もいれば、彼らは新しい世界に行ったのだと祝う人もいる。ようは解釈項だよ。」


「今、何不自由ないヒンチクリフも、少しずつガタが来て動かなくなっていく。何もできず、取り残され、捨てられる。忘れられる、痛み、苦しい、寂しい、不安だ、…ヒンチクリフに体を掴まれて揺さぶられているみたいに気持ちが悪いんだ、そうだろう、ブレイン」


「お前が俺を揺さぶってんだよ!」


「一人で不安なのは、荷が重いと感じるからさ。今だって一人でこなすことは沢山ある、ほかのヒンチクリフがやってたことを、自分がやることになる、それができるか分からないのが不安なのさ。相談できる相手がいなくなる、一人で生きられない、そう感じることが不安になるだけさ。知り合いがいなくなる、助けてくれる人が居なくなる、本当に一人で生きていくことが、怖いんだ。

だから言ってしまえば、一人で生きていければ怖いものなど何もない。幸い豊かな世の中だから、言葉がそれを支えてくれるに違いない。残された膨大な時間を、言葉ならば埋めてあげられる。知識という形で、それらを軽減させてあげられる。今は不安で構わない。その不安は解消できる類の不安で、形のある、恐怖に近いものだ。

それは感じて仕舞えばどうしようもないんだ。それなら今のところは目をつぶって、今いるヒンチクリフたちとたのしもうじゃないか。いつか訪れることに対して抱く不安で今を潰してしまう必要などないんだ。今目一杯に楽しくあれば、それが後から慰めになるだろう。それがよりお前を寂しく、虚しくさせるかもしれない。ああ、ここにも不安の芽がある。でもね、とにかくたのしさの中に身をおけば不安はなりを潜めてくれる。今解決しなくたっていい、これから生きていく中で、それを解決できるヒントが見つかるかもしれない。その不安を恐れる必要はない。まずは受け入れることからだ。」


「そうだ、ストレンジ、ポジティブにいこう」


「なんだそれ、ブレインってそんな奴だったっけ?」


「面倒だ。集中力が切れてきた、そうだろう、長すぎるんだ、お前たちの話は。糖分を取ろう。ほら、棚の中にケーキがある。あれはきっとうまい。」


「オエ、今気分じゃ…」


「いいね。コーヒーも淹れよう。きっと絵になる。目にも快いだろうね。」


「そう、これは今日限りの消費期限だ。俺は覚えているんだ。それに、やらなきゃいけない仕事も山積みだ。俺はそんなに暇じゃないのさ。さあ手伝え、二人とも。」


「うーん…わかったよ。」

(たしかに気が削がれた)


「ハイハイ。この話は終わり!」


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ブレインがポジティブになろうとするのは脳の防衛本能