![]() あらゆる眼差しが嫌いだった。奇異なものを見るような眼。見せしめのようだった。無意識の選択。値踏みをされて、目を逸らされる。俺はここにいるだけだった。それすら惨めにさせるのだ。あれらの眼差しは。優しそうな雰囲気を出しながら、平等であるかのように振舞いながら、その眼は俺を見て、瞬時になかったことにするのだった。
隣にいる知り合いや、家族や、その他の。なんでもいい。居たくもない場所で、唯一許せる要因を奪われ、俺はただ惨めな自分を内省するばかりしか、やることがなくなる。それらは俺がそれに気づいていることにすら気づかないのだ。もしかしたら、それすら、どうでもいいのかもしれない。配慮などない。不躾なその眼が。隠せているとでも思っているのだろうか。
眼差しを。俺に向けられる一瞬の蔑みが。俺に気づかれないとでも。俺はもう全くやることがなくなり、その場を逃げるようにバルコニーへ出る。誰の眼差しもなくなる。眼差し共の喧騒が遠のく。
きっと、選ばれし諸君には。わからないのだろう。勝手にすればいいと思う。俺は望んですらいない。
気づいていないのかもしれない。自分が選んでいることに。それでいて、穏やかで優しげな面を見せているのだから。ただうすら寒い。
平等に腐り朽ちていく面を見ていると安心する。誰しもがいつかは醜くなる。醜さがあるのだ。人間には等しく。生き物には等しく。
俺は彼らが生前に築き上げた功績だとか、人望だとか、そういった全てを知らない。そこに居るのは、そこに在るのはただ物質だ。努力が無駄になったなあ。築き上げた人脈はお前たちの偶像を磨きはするが、お前たち自身を清めてはくれない。
腐るだけがその物質の持ち物で、未来だ。だが蔑むことをしない。選ぶことをしない。うじ虫たちはそれがどんな奴だったかなんてお構いなしにムシャムシャと一心不乱だ。うじ虫だらけで、虚ろな濁った眼をした彼らのほうが、よっぽど親しみがある。
俺も死んだら彼らが掃除してくれるだろうか。
--- 20220727 人間不信で人間嫌い |