物質に動かされる心
(アーサーとピース)
------
「物質で、こんなに変われるんだ。大したことない。ない。ないはずなんだよ。わかる?」
「何を言ってんのか、わからないよ。」
「俺はさあ、気分がいいんだ。どうしてかってこの薬があるから。最初はあんなに気分が悪かったのに今はすごく気分がいい。お前が笑わなくても、俺はたのしい。おい!ピース!聞け。この小さな…白い…塊がだ、俺の気分をよくさせるんだ。誰かの慰めでもない、戯曲の感動でもない。…これがだ。こんなものが、俺をよくするんだ。感情はこの塊でどうにでも変わる。今俺って何でもできる気分!なあ、ピース、腕相撲でもやろうか!」
「僕はそういう気分じゃない。」
「あっそ!はっは!全部忘れたいんだ。たのしい一日なんて、そんな言葉さえ浮かばないくらい、俺は全部忘れたい。もう嫌なんだ…だめだ…なんでだよ…だめだ…俺が言いたいのはな、ピース…。」
「本当の感情なんてものが存在していると言えるのかって、事?」
「えっ…?ああ…そうかも。しれない。こうやって簡単に変わるんだ。気分の抑揚も、目の前の出来事を頭が理解して、精神的な作用を及ぼすのではなくて、…なんか、なんか物質的なものが作用して、機械的に変わるだけなんだ。って、考えたんだ。俺。そもそも、どうして、目の前の出来事は、俺にとっちゃなんでもないことなのに、俺の心にこうも影響してくるんだろう。」
「しらないよ。」
「なんでもないんだ。ほんと。それなのに、俺の頭はそれを咀嚼して理解して、それが賞賛だったら気分がよくなり、侮辱だったら気分が悪くなる。理解が、なにかしらの、物質の生成を促して、それで、気分が変わる…?」
「そんなこと調べんのは学者の仕事だよ。アーサー、学者になるの?」
「まさか。俺は今、ちょっとだけ興味があるだけ。やりたいことなんてなんもないよ。とにかくさ、そういう、分泌物で感情が左右されるとするなら、それが脳の理解の作用が伴って、行われるとしたら、誰かの感情に訴えかけるなんて言葉、胡散臭くなるな?そもそも、感情ってのがよくわからないね。なんでこんなものがあるのか、…。こんなものなければよかったのに…。この根源はなんなんだろう。どこにあるんだろう。」
「僕が知るもんか。」
「理解、理解、理解…そこんところが、謎だ。ふふふ、ふふん。」
「どんな言葉だって、ただの音の塊だ。アーサー。塊だよ。言葉は特別なものってわけじゃない。言葉だってモノだ。動き回る粒子。空間を埋める肉眼で捉えられないだけの物質。それが動き回って、勿論受動的にね、そうして、体の中に入っていって、気分を変えていくんだ。理解っていうものを混乱させているんだ。」
「難しいよ。」
「アーサーが言い始めたんだ。」
「そうか?俺、なんて言っていた?理解ってなにかなあ?言葉の通りってのもおかしいけれど、理解が言葉の通りだとしたらだ、俺は何一つわかっちゃいないと思うんだよ。そうだろ、ピース、そうだろ?俺にはなにもわからない…」
「……。」
「んー?ふふん…へへ…。」
「僕もう寝ようかな…」
「ピース!」
「なに!」
「気分って何かな。」
「アーサーが調子に乗ったり、引きこもったりするところの原因。原因の原因で事象。出来事。つまりアーサーの外にあるもの。」
「ええ?そんな。」
「自我に執着する必要なんかないんだ。本来の自我は無味乾燥なんじゃないかな。」
「そんなー。」
「僕らはどこにいるのだろうね。」
「ここがいいな。」
「そうか。」
「ここが落ち着く。」
「うん。」
------
2014/02/12