















針を飲まされ 針を刺されて
口を開ければ針が出る
針を踏む ざくざく刺さる
吐いて 吐いて
失せると思ったはずなのに
痛くて 痞えて
喉で絡まり取れやしない

まったく同じに見える箱
まったく別の意味を持つ
俺が一つを大切にして
一つを打ち捨てるのには
大事な 重要な 理由があるんだ
それこそが俺であり
それこそが俺だけの小さな部屋
安心のための最後の部屋

形もない ほんの一瞬の
たった一言でズタズタなんだよ
喉の奥にこびりついたまま、ずっと残り続けてさ
あんたのほうはキレーサッパリ忘れてしまって
なんの気なしに俺の肩を叩いて笑ってくるけどさ
あんたを見る度 何度でも這い出してくるんだよ
全くどうしてくれるんだ
たのしいたのしい間にだって
一瞬で抉るみたいに過っては台無しにして
あーあ あーあ あーーーーーあ
はやくどこかへ消えてくれよ
ちゃんと俺を一人にしてくれよ
なあ

にこりと笑えばそれでいい
明るい声で手を振って
特別な俺を準備するだけ
まるで一つであるかのような
首の皮一枚繋がった自分を
そうして適当に拵えてしまって
新しく作るのも億劫で
擦り切れるまで大事に羽織る
残り少しの足場を歩いて
千切れる時など思いもしないで
笑ったままで鋸を引く

黒い画面にずらりと並んだ名前たち
知っているのは数人だけで
あとは見知らぬ言葉の羅列
ほんの一瞬画面に映って
流れて消えるだけのそれらがなくても
気にもしないし気づきもしない
それでもそれぞれ眠るとき
最初の名前は自分自身で
相殺と 混乱と 思考の放棄に押しつぶされて
あくびひとつで忘れ去る


コカレロを飲める兄貴
コカレロを飲めない平和

血のにおい
不快なざらつき
広がる鈍痛
そこから自分を思い出す
形を持った吐き気が巡って
食い破って出ていって
元通りを期待して
這いずり回って汚して
べたべたの体
鉄の味
痺れる傷口
そこから自分を思い出す

ワルテはどちらかといえば文系だけどノエル効果で理科系も点数がいい。
自分で自分を追い込むので勉強は今のところそこそこできる方。





芋虫を安らかに見つめる
(すぐに手を洗えて 意図しない動きをしない限りにおいて)

何も知らないままで
認識することもなく
小刻みに切れ込みを入れて
何かであれば よかったのだろうか
その思考 そのものであるかのように
何かになれば よかっただろうか
だけど現実 こうなのだから
きっと最善は尽くしたんだよ
どうしようもない
それが一番だなんて思いもせずに
ただ なんでもなく 背を向けたくなる
どうでもいい なんでもいい
味をきければ十分だ
------
色んなことがどうでもいいが
なぜどうでもいいのかと思えば 先が靄がかってよくわからない

静止の中には静止しかなく
ただ外側の時間だけが動いている
無数の目的が 意味もなく頭の後ろに転がって
そこにあるのはわかっているが
振り返る動きを持たないために見ることができない
その何でもなさが 苛立ちと不安とを湧き立たせるが
それすら静の中では噴き出す口にたどり着けず
ただ壁にぶつかって内側に戻っていく
きっと一瞬の静止は その瞬間永遠で
ただ 存在なんだろう

どうしようもなく沸き上がり
溢れるときすらわからない
ほんの少し 掠っただけで弾け飛び
破片は刺さり 流れは止まらず
紐の先に 火種が落ちる
落とすつもりなんかなかったんだ
だけどいつでも 落ちる先には
油に濡れた紐があるんだ



組み立てられた
見栄えのいい積み木の家
花びらが撒かれて 拍手喝采を浴びる
考えて 考えて 考え抜かれた庭の木は
同じように考えられた家のために
短く刈られ 場所を決められ
枝葉に自由はどこにもない

鏡の前に 立っているのは誰なのか
そこには知らない顔があり
お前は誰だと問う声も
知らない誰かの部品をしていて
迷路の入り口 暗がりの手前
壊した自分を戻すには
欠けた破片が多すぎる
---
急な高揚感で何かをするぞと意気込んで
そのあとまた同じように急に冷めて
勢いのままたのしんで始めたはずのことが
全く何の魅力もなく褪せて映る
何がたのしかったのかもわからずに
最初からたのしさなんてなかったのではないかとすら思う
何だったのか そこにはもう感情がなくて
すりつぶされて味気のなくなった言葉しか残らない

頭に思い描いたことを
形にしようとしてみるが
円も四角も歪んで崩れて
それが自分の手によって
押されて潰され砕かれようとは
自分自身は思いもよらない
ただ細やかによりよい形を
作りたかっただけなんだ
―――

聞こえちゃならない音がある
声なのかさえも分からない
暗闇の中 時折近づくその瞬間は
意識を反らすのに精一杯で
いつも無意識にとどまって
好奇心より先に逃げている
耳を澄ませてはならない
耳を傾けてはならない
何もない場所から
耳を食いちぎる息がかかる
もうすぐ眠りに落ちるのか
それとも悪夢の中なのか
耳の奥を塞ごうと
押さえつけても意味はなく
瞬間が去る ほんの少しの長い時間を
息をひそめて待っている
―――
それに飲まれたら一瞬で終わる
というような恐怖が時折ある
漠然とした不安
ただすぐそこに凄惨な死が予期されるかのような
でもそれはたとえでしかなくて
何でもない、その予見に息が詰まる
恐ろしい
でも 過ぎ去った後は
その先を、見たらどうなるのかだとか
呑気に好奇心が顔を出してくる
―――

汚染されたガスの中
マスクもなしに歩くには
限度があるのとおんなじに
刺すような光を浴びながら
あんたの目を見て歩くには
俺の耐性じゃ足りないようだ
------


―――
201706-201810頃