
鍵付きの箱みたいに、絵と言葉は一致していた。
絵だけでも、言葉だけでもだめで
言葉を失った絵は解読できない暗号になった。
その時俺がどう感じて生きていたのか
手繰る手立ては失われてしまった。
雰囲気だけが残って、その時気づけたはずの何かもなくなってしまったようで
もう、暫く見ていないものもあって、絵だけでは本当になにも思い出せなくて
穴が開いたみたいだ。

失われた絶望

この、見えない脳のどこかから出てきた
過ぎてしまったものは二度と同じ姿では現れない
今のために歪んで
角は丸くて、下手するとへこんでいて
それでも、見たこともない脳は
頭蓋にすっぽりはまってんだから
後に引っこんで二度と見えないように隠れた昨日
墓に入るときは一緒さ
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最高にハッピーになりたいわけでもなく、ハッピーを捨てて絶望を直視したいわけでもなく。
ただ、感情から解放されたい。
平静で自由な心のままにいたい。

もし世界が俺一人だったら
もしここではないどこかへ行けたら
もし何も感じなければ
誰かにとっての哀れな世界も
俺にとっては楽園だ
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同じ場所には立てないのだから
同じになることなんてできない
窓から見える景色も違う
色も違う、空気も違う
それはそのときそれぞれ
俺だけの、彼等だけのもの
それでも同じになろうとする
俺は俺のままで満足さ
しいて言うなら出会いの記念に
君らのその
素敵な幸せそうな順調そうな皮
それだけもらっておきたいね
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ほんのこのあいだの数年前のこと
切断面は小瓶の中に消えた
そのためのことなのに
望んでいたはずなのに
何でもない今でさえ
擦った痛みのように障る
もっともっと、もっと必要なんだ
きっと足りないだけなんだ

たのしいことさえ考えていれば
いつの日か誰の首も飛ばなくなるさ
五分先さえ標識を頼りに進めば
いつの日か物も喋らなくなるさ
そうして得られる平穏の中で
もう何にも見えやしない

ぶあつい かわの えびふらい
なんでか しらんが ころもを
かぶっている あつく あつく
おれの しらない しかたで
きみに おれに みえないだけで
みしらぬ しかたで えびは ふくれる
ころもは すきだが えびは きらいだ

消えない 消えない
なくならない
とめどない
眠ることもできず
ただ嘔吐感が持続して
発熱のような倦怠感をもって
繰り返し、繰り返し
保身は裏返って抉れる
時計の音も聞こえない
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お前の体を突き破って出てきた枝を
僕はもうどうすることもできない
僕は何も言えなくなった
分裂して、目を開けて、
椅子は二つ分
一応正面に腰掛けるけど、
お互い見ることもできない
分かれて久しく
一つの頃も忘れて
断片にへばりついて繰り返す
喉に詰まった根っこを引っ張ったら
また吐いてくれるだろうか
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断たれたことから直れない

ここはどこか
ふっと裏から声がする
途端に脇から、耳に障る機械音
暗がりの渦は消え失せ
眼前に積まれた言葉の山
名残に任せて躓けば
それは跡形もなく消え失せる
ここはどこか
ただそれだけが足跡のように残る

逃げても逃げても追ってくる
拭っても消えず
洗ってもまた付着して
すっとした薬剤の香りも虚しく
じわじわと見知らぬ誰かがまとわりつく
誰もいない場所へ
誰の顔も見ないで済んで
誰の感情も聞かずに済んで
誰にも接触しないで済んで
ただひとり、自分で満たされる場所へ
背が、髪が、腕が、手の甲が
そこから世界へ引きずり込まれる
------

あなたにお似合いだからって
お前は俺にアルミの枠を手渡す
俺の指はズタズタになって血が流れる
お前はそいつを見ないふりして
ナイフとフォークで食事をどうぞって
俺はそいつを
食べる振りして床にばら撒く
------

はい、はい、仰せのままに
結局終わりは大したこともなく
戸を開ける者が失せただけで
恐れた世界は重い足音から滲んで
外に出る気もなくなった
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なにをしたらいけないのかはわかっても
なにをしたらいいのかわからなかった
------
形のない善は不安と似ている

一体何処で間違ったのか
そもそも正解を与えられたことがあったのか
成したいと願ったことは何一つ得られず
避けたすべては手元に収まる
思い返してみても、何を求めていたのか思い出せない
俺の知らない俺によって、
知らないうちに、いつの間にやら俺が在る
これは、いったい、誰なのか
理解しているつもりで、知らない誰かのようで
導かず、裁くだけの神を
嘲笑おうとする自分すら
きっと俺は、望んでいなかったはずなんだ
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案の定という言葉がお似合いだ
いつの日か、軽い気持ちでした
承諾の見えない約束の代償
どうにも逃げることができず
日が暮れるまで
惨めさに打たれた足を引きずる
いつとも知れぬいつかのあんたは
いつまでも俺を逃がさず
俺はもう痛みも麻痺して
嫌悪していたはずの吐血の痕も
いい模様だなんて抜かすんだ
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ワルテはいい子ちゃんになろうとしているけれど、いい子ちゃんとは程遠い自分に複雑な感情を抱いている。
何かにつけて失敗するというわけではないけど、器用というわけでもないので時折の失敗が重荷になる。

意味もなく
意味のない言葉が浮かび、
それが人生一番の重要句みたいに
俺の中で光り輝く
俺は心躍った振りして歌ってみたりして
救われて狂ったようになる
そうして目を逸らして
明日へ明日へと薄くのばして
何度も踏んだ地面をもう一度踏んで
感じた吐き気も潰れて擦り切れていく
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感覚し過ぎた気分の悪さ
その場をやり過ごすために
へへえ、へへえと上面を被せていたら
いつの間にか取れなくなって
もう感覚すらも麻痺して
無意味になり下がり
無意味にしたそれらが大半時間を占めて
一体今日は何をしたのだろうかと
思い出すこともない
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あとで、あとで、
あとで笑うからね
あとで泣くからね
あとで、あとで、
あとで、あとで、
今はもう、なんにも残らない

いつか失せて消えていく
知っていながらそれを知らずに
一人の部屋で想像してみるけれど
いつかの言葉を
時々念頭に置いておくくらいで
今日の日課を終えれば忘れる
じわりじわりと
なにもせず
準備だけをしている
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伝説のZ級映画

手のない手が
日々現れては
俺の首の根をつかんで
些細な偽りを数え上げる
気が抜けて、力も入らず、ただ引きずられて
潰れた腹を見ないふりをするけど
触ってしまえば痛かったことに気づいて
手がなければと
腹がなければと
数を数えながら
見えない腕が、バラバラに切り刻まれることを願う
------
201505.06-201601頃